拙著『日本讃歌』の「大いなる大地の恵み温泉天国」の中でもご紹介したが、私たち日本人は本当に恵まれている。全国津々浦々温泉が湧き出ていて日々、その恩恵に浴しているからだ。私も栃木、福島、群馬周辺の温泉にはよく行く。中でも加仁湯温泉、北温泉、木賊温泉などが好きだ。
一人旅が多い私が、今回は友人ふたりを加えて久々の温泉三昧。場所は群馬県の尻焼温泉、花敷温泉、湯ノ平温泉、沢渡温泉に行って来た。
「緑風」、辞書には初夏に青葉を吹き渡る風とある。まさに今、大地は緑風の中にある。全山、新緑が眩いばかり、その中に所によって山桜も散見された。私自身この季節が大好きだ。
この地は四十年ほど前、訪ねてはいるもののその時は温泉には立ち寄らず、若山牧水の「枯野の旅」の碑文がある暮坂峠やその周辺の牧水が残した作品を散策して楽しんだのを記憶している。
『枯野の旅』
乾きたる
落ち葉のなかに栗の実を
湿りたる
朽葉が下に橡の実を
とりどりに
拾ふともなく拾ひもちて
今日は山路を越えて来ぬ
長かりし けふの山路
楽しかりし けふの山路
残りたる紅葉は照りて
餌に餓うる鷹もぞ啼きし
上野の草津の湯より沢渡の湯に越ゆる路
名も寂し暮坂峠
野趣溢れる河原一面が温泉の尻焼温泉、浴場が古風な檜張りの浴槽の沢渡温泉「まるほん旅館」など本当に心地良い一日であった。次回は再び北海道函館へ。