2008年9月14日日曜日

寅さんからのメッセージ

 過日、池袋駅の埼京線ホームのベンチの看板に、ふてくされたような寅次郎の大きな顔写真があり、「俺は毎日 おもしろおかしく生きてりゃ それでいい 人間だからさ」という第42作で使った台詞があった。今年は寅さん渥美清が亡くなって十二年になる。思えば隔世の感ありといったところ。
 取り上げたいのは、各作品で彼が長旅から帰って、唯一の落ち着き場所である柴又の団子や「とらや」での夕餉の団欒時、家族に語る言葉にはいつも含蓄があり、そこでは「人間の幸せ」について大変考えさせる台詞がある。人はなぜ生まれ、何のために生きるかという人間究極の問題を包含しているからだ。この池袋駅のホームの看板に見られるように「おもしろおかしく生きる」のが作品全48作品一貫して寅次郎の生き方、真骨頂だ。他人から見れば、これといった職を持たない実に勝手気ままな生き方だと思うが、背景に山田洋次監督がそうした大きなテーマを取り上げて暗に見るものにそれぞれ考えてもらおうといった意図を感じ取ることが出来る。
 さて、この「面白く生きる」というテーマでは、先人の高杉晋作も辞世で「おもしろき こともなき世を おもしろく・・・」と残している。確かに晋作が生きた天保、嘉永、安政、万延、文久、元治、慶応といったいわゆる幕末は混沌とした時代で、生きる上ではちっとも面白くない世であったかも知れない。しかし、そうした時代ではあっても、少なくも私には晋作という青年が、師である吉田松陰から授けられた死生観そして己の強い信念の赴くまま激動の世を疾風のごとく駆け抜けて行ったような気がしている。それは維新を前に新しい時代を確信し得えた二十八歳と八ヶ月であった。
 人それぞれ・・・ あなたの人生はいかがだろうか?互いにその時(死)まで悔いのない人生を送りたいものと思わずにはいられない。