3月21日朝9時前、私は酒田駅の待合室にいた。この日は生憎の強風のため羽越本線秋田行き、新潟行きいづれも不通になっていて陸羽西線だけがかろうじて運転されていた。私の乗る気動車は酒田駅ゼロ番線から、山々が黄砂でかすむ中を新庄に向け発車した。これほどの黄砂は経験したことがない。途中、最上川周辺は予想に反して雪が少なかった。普段ならこの辺は相当量の積雪地帯だ。
昨夜、酒田の居酒屋で知り合った人はこの最上川の船頭さんだった。彼曰く、「最上川の舟下りは冬が一番」だそうだ。機会があったら私も是非、彼の案内で真冬の川下りを楽しみたいものだ。
今回の旅の目的は、今回で五度目となる鳥海山麓の牛渡り川と滝之浦地区だ。牛渡り川は淡水にもかかわらず海に生息するカレイが泳ぐ川として以前NHKが放映していたが残念ながら私はまだ一度も出くわしたことがない。そして夏には清流の証でもある梅花藻が咲く。周囲は長閑な田園地帯になっている。また、滝之浦地区は海に面した細長い地域で、ここの住民は湧水の恩恵をうけている。飲料水は勿論のこと、野菜などを洗う炊事場がありそこは地区の主婦の懇親会場にもなっていて微笑ましい。
そして東北の名山鳥海山は海に向かってどっしりと悠久の時を刻んでいる。中腹に「胴腹の滝」という突如土中から水を湧き出す所があり、以前行った時には多くの人がポリタンクを車から出してその水を汲んでいた。大自然の不思議をまざまざと見た思いだった。